2015年11月28日土曜日

<生まれ変わる旅> (2)スエズ運河〜ヨルダン・ペトラ

--- スエズ運河を進む ---

砂漠地帯を突き抜けて掘られた雄大な水路。
ヨーロッパからアフリカ大陸の南端を回らず、海路でアジアに向かうためのスエズ運河。


砂漠をラクダのキャラバン隊が運んでいたモノと人が
今はこの運河を、大型船で大量に行き交う。







 
 --- ペトラ(ヨルダン)---

紀元前から栄えた砂漠の貿易都市  ペトラ
水で削り取られた壮大で生きているかのような岩の造形の中を進んで行く。



と、目の前に突然姿を表す神殿。




ローマの影響を大きく受け、砂岩を掘り抜いて作られた神殿。
その奥には、過去に多くの人々が暮らしていた大規模な街。
遺跡とは栄華と夢の跡、それは人が生きた証し。








明日はオマーンヘ。















< 生まれ変わる旅 >(1)ベニス〜ギリシャ



いつも居る、アートだけの環境から離れ、
自分自身の内と外、過去と未来、
そして、この世界をじっくり見つめるための旅に出た。
土を耕し、肥やしをやるように、脳ミソをマッサージしリセットする。
自身が作り出す固定観念を破壊して新しい創造に備えるために。

今回は、海路で巡る4週間の旅。
ベニスを出航し、クロアチア、ギリシャからスエズ運河を通り、
アラブのヨルダン、中近東のオマーン、
そしてインド、スリランカ、マレーシア、シンガポールまで。

基になる文明も、民族や宗教、また文化や芸術も異なる国々で
その場の空気を肌で感じる時間にしたい、という思いを携えて出航した。


--- 人工の島、ベニス ---

少しうらぶれた感じが漂う路地裏にホッと一息。
作られた観光地と、あまりの観光客の多さに風情を感じるコトもままならない。




--- 最初の寄港地 スプリット(クロアチア) ---

紀元前後からギリシャ、ローマ、ベネチアの支配下、そしてナポレオン、オーストリア、ユーゴスラビア、イタリアと複雑に変化し、
1991年に独立してクロアチアになった。

10月なのに真夏のような太陽に照らされる地中海気候。
人間は天候に大きく影響される生き物だ、と実感。



デイオクレティアヌス宮殿の一部は博物館になっているが、内部がレストランやショップとして使われている。
大切に使われている方が、アリガタイ遺物として扱われるよりもナチュラルに街に溶け込むように思うなぁ。






--- 斜面に立つ中世の建築が美しい世界遺産の街 ドゥブロブニク(クロアチア) ---



海から見た街並みは有名ですが、旧市街を歩くと、とってもアジのある素敵な街。
人々の生活が、延々と引き継がれている長い時間として感じらる。




--- 古い田舎の生活をそのまま残すコルフ島(ギリシャ) ---

ギリシャ、ローマの時代に栄えた静かな静かな田舎の村。
今は、農業と漁業とほんの少しの観光で成り立っている。

海から山間の細い道を自転車で一気に馳け廻る。



庭にはレモン、葡萄、胡椒が、豊かに実っている。
歌いながら歩いているオジさん。
家の中から珍しそうに見ているお婆さん。
ノンビリ寝そべる犬。
数百年前から殆ど変わってないかと感じてしまう程、ゆったりした生活がある。
物質の豊かさとは異なる、これも、ひとつの幸せのカタチ。




そして、船は、スエズ運河へと向かう。







2015年9月28日月曜日

日経新聞 破格の陶芸 十選 (5) 呼継 よびつぎ

呼継とは、陶器の欠損した部分を陶磁片で埋める技法である。

「余白を残して修復する。
すなわち、空気に本質がある。」
と、呼継の粋を語る 森孝一先生。

私は先達の美意識に思いに馳せる。
戦国の時代に侍たちが激しく刀を交え、生死をかけた戦の中で
心の平安を求めて愉しんだ茶の湯。
器にとってのヒビや欠損は、人間にたとえれば致命傷にもなる大きな傷。
侍は、そこに「生と死の美学」を見たのではないかと。

ヒビは即ち余白、それは虚無、自由、無限 ・・・  。

私がガラスの呼継で表したいのは「生命の煌き」。


日本経済新聞 2015年9月28日 複写




2015年9月21日月曜日

日経新聞 破格の陶芸


日本経済新聞 文化欄で
「 破格の陶芸 十選 」が今日から始まった。

著者の森孝一先生は、日本の陶芸を、造形や技法だけでなく、
思想という側面から評論される、やきものの真髄を捉えている美術評論家だ。

海外や異文化の中では、思想を伝えられないと、
工芸は、アートではなくインテリアの扱いになりかねないと、私も常に危惧している。

アートコレクターズ(生活の友社) 2015年6月号で対談させていただいた際にも、空間、余白の捉え方について貴重なアドバイスをいただいた。
  → アートコレクターズ2015年6月号より


今日の一回目は、
縄文土器を、北海道から南下した、感性、自然観、魂を表現するやきもの、と、
独自の切り口で表していらっしゃる。

短い文章の中で分かり易く、且つキーワードがたっぷり詰まっていてとても読み応えがある。

残りの九選が楽しみだ。


日本経済新聞 2015年9月21日 複写










2015年9月13日日曜日

独自の世界を創りだす

二人の 陶芸家の展覧会にうかがった。

鋭く切り取った面と引きちぎった土の跡が見せるハーモニー。
流れたり溜ったり、自由に動く釉薬。
思索し生きているような作品達。

東田茂正氏に、お話をうかがうことができた。
偶然の貫入や焼き色の変化をうまく誘うように手を掛けているが、手技で素材をコントロールしようとはしない。
独自にブレンドした土の味を引き出し、ありのままの土の表情を造形の一部として受け入れる、そのフトコロの深さが見事。

窯入れしたもののうち、出来栄えに納得し作品として人前の出すのは、わずか15%というストイックさに驚いた。
しかしながら、そんな厳しさを感じさせない柔らかいお人柄から「土を受け入れる」おおらかなエネルギーを強く感じた。

「織部長方皿」  展覧会図録より
東田茂正 陶展
銀座 和光ホール 9月13日まで
http://www.wako.co.jp/exhibitions/471


谷本景氏とは
13年前、名古屋で隣同士で個展をして以来の再会。

古くから茶陶では馴染みの深い伊賀焼。
一般に言われる「桃山の伊賀焼の再現」ではなく、
谷本景氏は、今の伊賀焼の美を生み出す。

作品を何度も窯に入れて、色が変わり天釉が 滴り焼き味が追加される。
村田珠光の「欠損の美」から、朽ちていく美しさというコンセプトを得たとおっしゃる。

ローカルこそグルーバルになるとチカラ強く語る姿が印象的だった。

独自の土、独自の窯から生まれた他にはない表現。
私には、『しぶとい伊賀焼』のイメージそのものに感じた。

古代から 谷本 景展
京橋 LIXIL ギャラリー
10月27日まで


今の自分にとても響く作品と作家さん。

「人前に出せるのは15%」と仰った東田氏、
「1年に1点、心から満足できる作品を生み出せれば幸せ」と谷本氏。
素材と向き合い、造り続け、自分だけが見つけられる美、表現を追い求める真摯な生き方がカタチになる。

人事を尽くし、火に任せ、そして受け入れる。
人間が技術で素材をコントロールする西洋のスタイルとは異なる思想がココにある。

手先の技術がいくら上手くなっても、作品の魅力にはならない。
ただキレイを追求するだけではない、表現者の魂がカタチになった作品こそが、
ヒトを魅了するのだ。

今日からまた、新しい気合でガラスと向き合えそうだ。






2015年6月24日水曜日

日本橋高島屋 西中千人ガラス展「呼継と光の庭」ご報告

6月17日から23日まで、日本橋高島屋 美術画廊にて
西中千人ガラス展「呼継と光の庭」を開催させていただきました。


画廊中央に、「光の庭」を設置しました。


水と光を表すガラスの蹲型オブジェと飛び石で構成した新しい日本の庭の提案に、
ご来場の皆様は、驚きと安らぎを感じてくださったようでした。

嬉しいことに、蹲と庭は海外から来られたお客様のご自邸に設置されることになりました。
その客様とは偶然にも、同じアメリカの美術大学に在籍していたことがわかり、不思議なご縁に感激しました。


20日には、龍村美術織物 四代 龍村平蔵氏との対談を開催させていただきました。
正倉院裂や名物裂の「復元」とバカラ社とのコラボなどの「創作」を織の世界で探求される龍村氏には、カットグラスを織で表現された帯をお持ちいただきました。


二人の仕事の共通点となる「ガラス」「光」「透明」をキーワードに話が弾みました。

 

龍村氏からは、平面に近い帯にカットグラスの立体感を織り込む方法や、透明な光のプリズムを表現するのに30色もの色糸を使うという驚きの技についてをお聞きしました。



私は、織田有楽斎が残した歴史的な呼継茶碗の精神性や、ガラスの呼継に対して海外でいただくご感想、また世界の中での日本文化の独自性についてお話しさせていただきました。

意外な共通点や表現の基礎となる思想に、ご来場のお客様は熱心に耳を傾けられていました。


ガラスで光、水を表す「光の庭」。
生命の煌めきをヒビで表現する「ガラスの呼継」。

安らぎと煌めきを心で感じるアートをライフスタイルとして提案することで、
より多くの方の共鳴を実感できた展覧会でした。



2015年6月12日金曜日

いつもワクワクする、伊勢丹のディスプレイ

吸い込まれるような不思議な空間。

森の中を探検するかのごとく、何があるのだろうと近づいてみると、、、




私の作品「呼継」3点がユニークに展示されています。


盌と香炉をこんな風に見せるなんて、想定外の面白さ。


いつも新鮮でドキドキさせてくれる、伊勢丹ならではの楽しい魅せ方。

新宿伊勢丹本館5階 アートフレームで、6月16日まで展示されています。









2015年5月25日月曜日

ロンドン アートフェア「 COLLECT 」 ご報告

毎年5月にロンドンで開催される立体作品のアートフェア「 COLLECT 」に、
今年は4回目の出展、Featuring Artist として参加しました。



VIPプレビューでは、ガラスの呼継に、
 “Extraordinary beautiful !!“ “Amazing !!“ “How gorgeous !!“ と嬉しいお言葉が続々と。


作品誕生のストーリーと、ガラスの呼継の礎となる日本の文化的背景をお話ししたアーティストトークも大好評。
詳細はこちらをご覧ください。
http://www.nishinaka.com/collect2015.html


~ 番外編 その1 ~


アーティストトークを熱心に聴いてくださったこちらの女性。トーク終了直後にお話にいらっしゃった内容は…..


私のジャケットのラペル(襟)のクロコダイルが気になってトークに集中できなかったということでした(笑)。
革が大好きでよく身につける私ですが、路上など様々な場所で、見知らぬ革好きさんからジャケットやパンツを褒められることがしばしばあります。


~ 番外編 その2 ~


朝のひとコマ。
gentleman の国では、ビシッとアイロンを効かせたシャツで出勤(?)です。


~ 番外編 その3 ~


ホテルでの朝食。 English Breakfast.
ロンドンではいつもマッシュルームが美味しいです。


~ 番外編 その4 ~



短いOFFは自転車で街中散策。
快晴で気持ちのよいサイクリング日和。
テムズ川対岸はウェストミンスター宮殿。


 1689年創業、ロンドン最古のテイラー、EDE & RAVENSCROFT.
馬の毛を使った法廷用のかつらは、現在も使われてるとのこと。


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器にとって致命的な傷であるヒビを以って生命の輝きを表現する、西中千人の「ガラスの呼継」。
日本独自の伝統の美意識「不完全の美」を礎とした新しい日本のガラスアートが、
異文化の中で独特の光を放ち、世界中のコレクターからの共感を得られた5日間でした。

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アートフェアのご報告と番外編でした。












2015年4月26日日曜日

京都 法然院 第9回 悲願会 ひがんえ

法然院 第9回「悲願会」
5月2日(土)から5月6日(水・振替休日)まで

東日本大震災の被災者支援を様々な形で行っている京都の法然院さん。
恒例の「悲願会」が行なわれます。
お近くにお出での方はぜひ、お運びください。


以下、法然院ホームページより抜粋

法要、法話、コンサート、舞踊、慈悲市(バザー)、美術作品の展示、茶会などを執り行います。集まった皆様方からの御志は現地で被災者支援をされている団体に寄付いたします。ご友人・知人をお誘いになられ、多数の皆様方が被災者に心を重ねる想いを改めて表して下さいますようご参加を心よりお待ち申し上げております。



2015年4月25日土曜日

大太鼓 930年の歴史の重み

お世話になっている愛知県津島市の堀田新五郎さんをお訪ねした。

伊勢神宮をはじめとする神社仏閣に太鼓を納められている堀田新五郎商店さんは、
930年、26代の長い歴史を持つ。

http://www.taiko.jp.net



ちょうどこの日は、津島の藤まつりに向けて、大太鼓を運ばれるところだった。
受け継がれる日本の文化を守り、その鼓動を現代に伝える。
今回は、茅の輪くぐりならぬ、太鼓の胴をくぐるイベントも開催される。




こちらをお訪ねする楽しみの一つが、様々な銘木を見せていただけること。
木目は、生きて来た時間や記憶を表す自然が生み出す命の証。
人間が到底作り出せない生命の美に圧倒されてしまうのだ。





2015年4月17日金曜日

光のように 水のように

マンションの一室に、施主様の思いが詰まった茶室が完成した。

茶室への入口に、心身を清める空間の制作をご依頼いただいた。



複雑に反射する透明のガラスは、光となり水となり、別世界への誘いの役割も果たす。

1200℃のトロトロに溶けたガラスから1本1本鋳込んだ輝きは、
共に設置される手水鉢を優しく包み込むだろう。

手元から離れる前に、愛おしさを噛み締め、制作途中の工房で撮影した。


2015年3月27日金曜日

日本独自の美意識をガラスアートで表現「ガラスの呼継」

茶碗のヒビ割れに美を見出し、「金継」して新たな美を生み出す。
それが日本の美意識「不完全の美」。
日本伝統の精神を礎にした、現代のガラスアートの表現が私のガラスの呼継です。

今日は、思いっきり完全燃焼。
息のあった4人のチームワークで、デッサンを超える力作に仕上がりました。



2015年3月23日月曜日

水彩画でガラスの躍動感ときらめきを表現

水彩画家の柘植彩子さんの作品に、私のガラスコンポートが登場している。


透明の器が単なる形でなく、流動する熔けたガラスの躍動と捉えて表現されている。

複雑に反射する光を閉じ込めたガラスが、アスターを優しく包み込んでいるのが印象的な絵画。



花を生けたり料理を盛ったりと、器は用で表情を変える。

水彩画という手法によって生み出された新たな美。

自分の作品が、人の美意識を通してうつろうことは、とても興味深い。





2015年3月12日木曜日

ロンドン アートフェア 「 COLLECT」の顔に!

ロンドンの Saatchi Gallery で開催される アートフェア 「 COLLECT」の広報媒体に、
今回の出品作品「呼継 YOBITSUGI 」が採用されています。(「 Craft Magazine 」 Issue No.253 ) 



日本の美意識を自分なりに解釈し、現代に「ヒビの美」を表現したガラスアートが
イギリスでアートフェアの告知画像として選ばれたことは、とても光栄&嬉しいです。
責任を持って、キッチリ暴れてきますよ !!

世界中から来られるコレクターさん、楽しみにしていてください。


COLLECT
5月8日(金)〜11日(月)
Saatchi Gallery, LONDON





2015年3月8日日曜日

伊勢丹新宿店 新しい出会い

アートに触れる上質な空間が、伊勢丹新宿店 5階に誕生。

『 日本を代表する作家たちの魂のこもった作品を すみずみまで、眺め、触れ、使う喜び 』がコンセプト。



床、天井、壁。天然木の美しさが活きる洗練された心地のよい空間で、
じっくりと器たちと触れ合っていただけるのは作り手にとっても嬉しい。

隣は、林屋晴三先生監修による茶の湯のスペース。
無垢板をくりぬいた立礼卓や石のテーブルが、現代作家の道具をより美しく際立たせている。

アートは特別なものでなはく、日常の当たり前ものだと、だれもが実感できる場所だ。






2015年2月28日土曜日

創流120周年 いけばな小原流展 「 生命のかたち 」 家元と共に

会場で「いけばな」や小原流の歴史、そして自身の表現についての考えを
5世家元 小原宏貴さんから聞かせていただいた。

枯れて乾いた木の根と少しの緑で”イノチ”を表現する。




盛花で室内に、深山幽谷や理想の桃源郷を作り出す。
花を生けるヒトの思想が、そのまま作品に表れてくるのが、見ていて興味深い。

現代から流祖の時代に遡る展示は、社会的な背景やライフスタイルの変化と共に生きる「いけばな」を感じさせてくれる。


流派を代表する家元として、様式美を伝え、そして残していく。
同時に、一人の表現者として個人の内なる世界をカタチにしていく。



今後ますます、目が離せないアーティスト 小原宏貴氏。

創流120周年 いけばな小原流展 生命のかたち BIRTH AND REBIRTH
日本橋高島屋 8階で
3月3日(火)まで開催中






2015年2月21日土曜日

ココから始まる

オレンジ色に輝きながら、柔らかに動くガラス。

光のような、水のような、空気のような透明のガラスは、1,200℃では、こんなに自由。



茶室の蹲のパーツを、一本ずつ作っています。