2015年9月13日日曜日

独自の世界を創りだす

二人の 陶芸家の展覧会にうかがった。

鋭く切り取った面と引きちぎった土の跡が見せるハーモニー。
流れたり溜ったり、自由に動く釉薬。
思索し生きているような作品達。

東田茂正氏に、お話をうかがうことができた。
偶然の貫入や焼き色の変化をうまく誘うように手を掛けているが、手技で素材をコントロールしようとはしない。
独自にブレンドした土の味を引き出し、ありのままの土の表情を造形の一部として受け入れる、そのフトコロの深さが見事。

窯入れしたもののうち、出来栄えに納得し作品として人前の出すのは、わずか15%というストイックさに驚いた。
しかしながら、そんな厳しさを感じさせない柔らかいお人柄から「土を受け入れる」おおらかなエネルギーを強く感じた。

「織部長方皿」  展覧会図録より
東田茂正 陶展
銀座 和光ホール 9月13日まで
http://www.wako.co.jp/exhibitions/471


谷本景氏とは
13年前、名古屋で隣同士で個展をして以来の再会。

古くから茶陶では馴染みの深い伊賀焼。
一般に言われる「桃山の伊賀焼の再現」ではなく、
谷本景氏は、今の伊賀焼の美を生み出す。

作品を何度も窯に入れて、色が変わり天釉が 滴り焼き味が追加される。
村田珠光の「欠損の美」から、朽ちていく美しさというコンセプトを得たとおっしゃる。

ローカルこそグルーバルになるとチカラ強く語る姿が印象的だった。

独自の土、独自の窯から生まれた他にはない表現。
私には、『しぶとい伊賀焼』のイメージそのものに感じた。

古代から 谷本 景展
京橋 LIXIL ギャラリー
10月27日まで


今の自分にとても響く作品と作家さん。

「人前に出せるのは15%」と仰った東田氏、
「1年に1点、心から満足できる作品を生み出せれば幸せ」と谷本氏。
素材と向き合い、造り続け、自分だけが見つけられる美、表現を追い求める真摯な生き方がカタチになる。

人事を尽くし、火に任せ、そして受け入れる。
人間が技術で素材をコントロールする西洋のスタイルとは異なる思想がココにある。

手先の技術がいくら上手くなっても、作品の魅力にはならない。
ただキレイを追求するだけではない、表現者の魂がカタチになった作品こそが、
ヒトを魅了するのだ。

今日からまた、新しい気合でガラスと向き合えそうだ。