2014年6月29日日曜日

ヴィーナスが菩薩に

玄関を入ると大きな窓越しに拡がる中庭の緑が目に飛び込み、圧倒された。
皆が集まるこの場所に、空間を引き締め、メモリアルとなるガラスアートを設置したいとのご依頼だった。


生命の誕生を表現した作品は、この場所で心に焼き付くシンボルとしての役割を果たしてくれそうだ。
庭の緑とブルーのガラスを透して差し込む光が、来客の心を安らかに癒してくれると確信した。








2014年6月20日金曜日

林屋晴三先生ご来場

日本橋高島屋の個展に、林屋晴三先生がお越しくださった。


サイズ感やフォルム、バランスについて、いつもどおりの厳しいご指導に愛を感じる。
数年前、先生からいただいた「覚悟」という言葉は、
今も私の信念だ。

課題をいただいていた作品が完成し、次週ご覧いただくことになった。
「おう、やっとできたか。」という先生の優しい笑みに
「お気に召さなかったら叩き割ってください。」と覚悟を決めて答えた。



中澤一雄氏と対談 ー ガラスの呼継 ー

6月14日 日本橋高島屋の個展会場で、ギャラリートークを行なった。


ガラスとの出会い、呼継について、また、ガラスの日本庭園や禅の思想など様々な観点から、
高島屋美術部顧問の 中澤一雄氏 に対談のお相手をしていただいた。



私にとって「呼継」とは、日本独自の美意識。
欠点であるヒビを金で強調し、景色として愛でる。
こんな文化は日本だけ。

400年前、常に生と死を哲学しながら戦に挑んだサムライが生み出した茶の湯。
「ヒビ」を「死」と捉えたサムライの生き様、死に様の美学の表現だと私は解釈している。



割れた物の修理とは異なり、あえて割ることから始めている意味について。
今ある物を壊すのは、「このままで良いのか?」「この先に未来はあるのか?」という自分自身への問いかけ。

壊すためにいくつも作る。作った物を自分で壊す。
壊すという行為は嫌なことだが、それに勝るものを生み出さなければならないという信念のもと、
覚悟を持って壊し続け、生み出し続けている。



「ひとつの作品を創るのにいくつの作品を壊すのか」という質問に、「最低3つの作品を壊す」と答えると、
「そこから生まれる新たな作品は、4つ目の命だ」と、中澤さんは仰られた。

変わらなければならない。
それが私の呼継。

西中千人ガラス展@日本橋高島屋 美術画廊
6月24日まで開催中。


2014年6月13日金曜日

今年も幕開け。ー 日本橋タカシマヤ 西中千人展 ー

恒例の日本橋タカシマヤでの個展が、今年も6月11日にスタートした。
「ガラスの呼継」を主とした展覧会も3年目。


今年の呼継は、「ヒビの美しさ」、ガラスだからこそ出来る「透け」を活かした作品だ。
ヒビがあることで、元々の造形や質感までも、より魅力的に変えてしまう「不完全の美」。
茶の湯の先人が茶碗のヒビに見出した美学を、今、新たなカタチでガラスで表現している。


嬉しいことに毎年、一年に一度の再会を楽しみにご来場くださる方が大勢いらっしゃる。
そして、一年の成果を見届けて、喜んでくださる。
内心、どのようなご感想をいただくか、ヒヤヒヤもしている。
このような方々に支えられているからこそ、思い切り自分の表現を続けていけるのだと、実感できる時間だ。


茶道具も、伝統の美意識に基づいた新鮮さに、驚きと共感をいただいている。
茶会でお使いいただいた硝子呼継盌も、大変好評だったとお聞きし、嬉しい

呼継のほか、光と水を表した新しいシリーズも発表している。

大型レリーフ「銀河の木もれ陽」


ガラスの表現の無限の可能性を、皆様と分かち合える2週間が始まった。

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西中千人ガラス展

6月11日(水)~24日(火)
午前10時~午後8時(最終日24日は午後4時まで)
日本橋高島屋6階 美術画廊
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2014年6月12日木曜日

大徳寺の茶会にガラス茶碗


 6月11日 、京都 大徳寺で、古田織部400年遠忌追善茶会が行われた。


林屋晴三先生が席主を務められた黄梅院の薄茶席で、私の作った「硝子呼継盌 織部」をお使いいただいた。
林屋先生から、この茶会のために、織部のイメージで呼継盌を作ってみなさいと課題をいただいていたのだった。




現代作家の様々な道具とともに、大徳寺の茶会でお使いいただいたことは何とも嬉しいものだ。

硝子の茶具といえば、なかなか正式に使われる機会が無いと考えられているが、
1726年に近衞家熙が「びいどろの菓子器」を大徳寺の茶会で使ったという記録がある。

大徳寺の中でも黄梅院は、普段公開されない塔頭で、今回の希少な機会に硝子の茶具が使われたことは、私にとって特別な想いがあり、名誉なこと。
自由奔放な織部が、もっともっと自分のスタイルをやりなさいと、背中を押してくれた気がする。




今日は日本橋高島屋での個展の初日。
佳い日が重なった。






2014年6月6日金曜日

ガラスの呼継 ヒビ割れに美を見出す

例年ならばもうとっくにガラス熔解炉の火を止め、展覧会での作品発表に集中する時期だ。

しかし今年は例年以上に早い時期から展覧会が始まり、作品制作と発表が同時進行している。




どうしても、もうひとつ、作りたいものがあった。
暑いのが大の苦手の私だが、真夏の暑さの6月4日、長い間想いを込めていた作品の制作に臨んだ。

お披露目できるまで、もう少し仕上げの時間を要する。


  茶碗にとって「死」であるはずのヒビ割れの中に、美を見い出した茶の湯の先人。
  禅の思想を礎に、生と死を哲学したサムライが発見した美を、ガラスで表現した呼継。
  400年の伝統をいま、新なカタチで表現する。


ガラスをつくるというよりも、”光”を見出し、引き出すことが自分の仕事かもしれない

ダイナーズクラブ プレミアム会員誌 「 VALUES 」で、ご紹介いただいた。


個展開催中の名古屋の古川美術館 分館 為三郎記念館での取材だった。
( 2014年3月15日~5月11日 西中千人展 )
http://www.nishinaka.com/Exhibition_at_furukawa.html

ガラスを始めたきっかけや、アメリカ留学中に意識した日本人としての独自性。
いま取り組んでいる「呼継」について。
日本庭園と数寄屋建築の中で展開した「光」の存在としてのガラスのインスタレーションについてなど。

初めて私の作品を観てくださったた方とお話し、質問に答えていくと、
ガラスとの関わり方が無限に拡がり、新しい取り組みのきっかけが生まれてくるから面白い。