2020年5月18日月曜日

京都 法然院ガラス枯山水「つながる 」1年経ちました

法然院さんにガラスの枯山水を設置させていただいてからちょうど一年前。
大勢の方の心がつながってスタートしました。
リサイクルガラスのオブジェが苔に覆われる日を楽しみに。

It's been a year since glass Zen garden is installed at Honen-in temple, Kyoto.
This project has started with the hearts of many people.
I look forward to the day when the recycled glass objects are covered with moss.






2020年5月5日火曜日

好きな本 自分の歪んだ色メガネが形成された理由

Face Book でバトンリレーをしているブックカバーチャレンジ。
私が選んだ7冊はこれです。



1. 原色愛蔵版 日本の陶磁全14巻 
監修 川端康成、責任編集 林屋晴三

各作品に対する深い愛が伝わってきます。
問答無用、最も好きな作品集です。
茶碗は知識だけで楽しむモノじゃないですね。 



 
2. 知の逆転

知の巨人たちへのインタビュー
ロンドンで観たダヴィンチの解剖図展を思い出しました。
彼の目的は真理の追求で、絵は手段です。
科学も芸術も行き着く先は人間にとっての真理です。
私が薬科大学卒だからそう感じるのでしょうか?

スマホ上で全ての知識や情報が手に入る状況で、知とは何でしょう? 
科学的、社会的、芸術的にも生みだすコト。
やはり創造ですね。 





3. 農協 月へ行く  筒井康隆

筒井氏の作品は中学時代に大ファンになり、今でも50冊以上持っています。
発想力、人間観察、シニカルで独自の切り口、エンターテイメント性のバランス感覚も天才。
彼の脳ミソが欲しい。




4. シッダールタ   ヘッセ

釈尊を題材にして、東洋思想を異文化から解釈した小説。
読み手の心の奥で広がって、それぞれのストーリーを紡ぐというのはアート作品の理想形だなぁ。
「受け入れる」を強く感じさせる、ズッシリと響く哲学書です。
また、長谷川等伯の松林図屏風を思い起こしました。
多々の苦労の末に天下一の絵師になった等伯が、息子の死を悼みながら描いた「全ては一瞬の幻」。
同じように受け入れるという概念を観てしまいます。





5. 人間の建設  小林秀雄 岡 潔

最も多くの付箋をつけた一冊です。
数学を情緒と捉える岡氏と、その人の身になるのが批評の極意という小林氏が、科学、政治、文化等々を自分ゴトとして論じるその内容の鋭さ深さは感動を超えて美しい。

これこそ本物のアート思考ですよ!!





6. 禅と日本文化  鈴木大拙 

日本文化や芸術の概念を言語で、それも英語で異文化に伝えるという離れ技を成功させたD.T.鈴木氏。
以前ニューヨークの展覧会で、茶碗の「手乗り」を説明する際に、器を手に乗せる習慣のない彼らに対して、
表面の触感なのか、重さなのか、手で包む形なのか、、、ぐらいのことで、私は困ったのに。
素の貞太郎さんは、どんな人だったんだろう。
R.MUTT 1917 デュシャンの「泉」は、リアルタイムで観たのだろうか?





7. 五輪書  宮本武蔵

剣の天才が死の数日前まで熊本の霊巌堂に籠り自分の一生と向き合い、書き上げた。
戦いの為の生涯を終えるにあたり、後の世に伝えたかった真意は何だろう?
ジックリ著者と語りあえるから、長い旅行の際には難しそうな本を持って行くのですが、
何度も挑む私にとって、彼の心は難攻不落です。

道においては死を厭わず思ふ。(独行道)






2020年5月4日月曜日

【 祝!World Media Festivals 2020 金賞受賞!】ガラス枯山水「つながる」コンセプト映像

2019年5月 京都法然院参道に恒久設置させていただいたガラス枯山水「つながる」

この空間作りに込めた想いを描いたコンセプトムービーが、ドイツハンブルグで開催の「2020 The World Media Festivals」で金賞を受賞した。
https://youtu.be/_NREJPavags

この映像を作るにあたり、ディレクションをお願いしたのは
team TANIYON のディレクター 西岡眞博氏。

ガラス枯山水の作品コンセプトだけでなく、私の生き方まで深く本気で突っ込んできてくれた。
結果、目に見える作品の奥にあるストーリーを紡ぎ出す哲学的で心優しい映像に仕上げてくれた。
感謝‼︎

当時の西岡監督の苦悩が詰まったご本人のblogがコチラ。

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『考古学的な時間と宇宙規模の空間の中に、境界なく存在する自分自身を体感する』という枯山水や禅の概念が、見た目のアート空間の背景に在るのが伝わると嬉しいです。私にとってビジュアルアートって、目に見える奥にある『何の為にコレを作ったんや?』っていうストーリーが最も大事だと考えてます。

これは最初に受け取った西中さんからのメッセージ。作品の背景にあるストーリーは何なのか、それを探るために、大垣へ向かう車中でずっと西中さんの考えをお聞きした。

西中さんの話の中には、禅、宇宙、再生、循環、輪廻、という言葉が頻繁に出てくる。恐らく、この辺りにヒントがあるんだと思ったが、正直、最初は何を言ってるのかよくわからなかった。

日本耐酸壜工業の工場内は全体に薄暗く、巨大な機械が稼働するものすごい音で、耳元で大声を出さないと声は聞こえない。工場の中心部には25メートルプールほどの大きさの溶解炉があり、そこで廃棄ガラスをリサイクルしているそうだ。

溶解炉は(安全のためか)外から見えないところにあるのだが、そこかしこから高温に熱せられたガラスが発する強い光(1400度に熱せられたガラスは紫外線をだす)と湯気(煙?)が立ちのぼり、冬だというのに工場全体がなんとなく暖かい。

この日の目的は、西中さんの作品のために作った巨大な型にガラスを流し込む作業を撮影すること。
ざっと簡単に作業工程の説明を受け、撮影の準備をしていると、長さ約2メートルほどの直方体の箱が運ばれてきた。この中に型があり、その中に溶けたガラスを流し込むのだ。

箱と言っても、各辺を太い鉄のアングルで補強された、熱にも重量にも耐えられる強固な石棺のような箱。箱の蓋が開くと、すぐに作業は始まった。

1400度に熱せられドロドロに溶けたガラスはまるで溶岩のようで、強い光を発しながら型に流し込まれていく。溶けたガラスが細い線になってとゆを流れていく様子はとても美しく、吸い込まれるように見とれてしまう。

摂氏1400度という数字には全く現実味がなく、この溶けたガラスに触ったら熱いんだろうな、などと考えているうちに作業は終了し、すぐに蓋が閉められる。これからこの箱を熱してガラスを冷ますのだ。

熱して冷ますというのはおかしな表現だが、1400度もの高温のガラスは、常温で冷ますと割れてしまうらしい。だからすぐに蓋を閉め、高温に熱しながら温度を下げていくのだ。蓋を閉められた箱は、また数人の男たちによって運び出されていった。

薄暗い中を数人の男たちによって運び込まれ、溶岩のようなガラスを流し込まれて、また静かに運び出されていく石棺のような箱。一連の作業は現実のことだとは思えない、まるで儀式のようなものだった。地底世界で密かに執り行われる、再生の儀式。

日本耐酸壜工業を後に、ガラス瓶の再生工場へ移動。工場の入り口には大量の廃棄された瓶が色ごとに集められている。最初はこんなもの撮っても仕方ないと正直思ったが、仕方なく工場長の案内に従った。

工場内をベルトコンベアに乗って運ばれる廃棄瓶たち、まずはその砕かれた瓶から手で紙製のラベルを取る女性がいるコーナー、ここでまず少し驚いた。

こんな粉々の瓶のかけらからラベル紙を取り除くのか?と。どうせ高温で溶かすのだから紙なんか燃えてなくなるだろうと。でも、その紙のラベルを取る作業が、清拭に見えてきた。亡くなった人間の身体を綺麗に清める作業、清拭。

この辺りから自分の中で、何かが訴えてくるのを感じだす。宇宙、再生、循環、輪廻、そうか、この瓶たちはここで生まれ変わるのだ。

一度そういう具合に考え出すと、全てがそういう風に見えてくる。ラベルを取り除かれた瓶は、さらに細かく砕かれて硅砂に近づいていく。まさに再生。

一通り撮影して建屋の外に出ると、最初に見た大量の廃棄された瓶をシャベルローダーで掻き集める作業をしている。そのシャベルローダーの動きはとても高圧的で、化け物のようだ。人間の業がシャベルローダーに姿を変えた化け物。一方、掻き回される廃棄瓶の山は、なす術もなく翻弄されている。人間の業に弄ばれる大量の瓶、それは消費の象徴。

そんなことを感じながら瓶の山を見ていると、動きが波に見えてきた。そう、地球誕生以来絶え間なく寄せては返す海の波。まさに循環。

西中さんの言う禅の世界観、宇宙観というのは、まさにこのことなのではないか。絶え間なく循環し続ける波、雲、水、そして人の命。それらは全てが一瞬であり、なおかつ永遠。

その世界観を表現する方法として、ある人は宗教を用い、ある人は庭を作り、ある人は茶を点てる。そして西中さんはガラスを使う。

後日談。
ガラスを流し込む様子はスローモーションで撮影していたのだが、よく見ると溶けたガラスはまっすぐに流れず、螺旋状に流れているのだ。まるでDNA。とても驚き、因果を感じた後日談。

以上のような思考の過程で、僕の考えは一応の答えを出した。
法然院に設置された(一体になった)ガラスアート。絶え間なく繰り返し寄せる波のような廃棄瓶。その大量の瓶を弄ぶ業の化身のようなシャベルローダー。砕かれ、粉々になっていくに従って清められ、無垢なものに戻っていくガラス瓶。
溶岩のように溶けて発光するガラス。そして冷えて固まった巨大なガラスがアートへと姿を変えるさま。これらを説明的に長々と見せるのではなく、感覚的に繋いでいく。それはガラスの循環、ガラスの宇宙、西中さんの宇宙。

そこに、循環、再生の象徴であり、地球(宇宙)の営みとしての自然現象、寄せる波、流れる雲、湧き出す水、こぼれ落ちそうな星空、噴出す溶岩、二重螺旋、命、などを絡めていく。説明などしなくて良い、感じてもらえる映像作品を目指す。
それから、法然院をきちんと撮影したい。特に本堂、ご住職、お許しが出るなら御本尊も撮りたい、一つの宇宙観として。


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